天然物のものとりと聞いて薬のもとになる物質を探しているというイメージを持つ方も多いと思います。もともとその化合物が持っている機能や役割を見出す研究も大切かつ面白いですが、研究の意義を分かりやすく説明するときには創薬の話をする方が理解してもらいやすいですし。
ただ、天然物の探索から実際に薬として上市されるところまで行く化合物はそこまで多くないことは、研究に携わる方はよくご存じかと思います。そんな中でも、幸運と努力の結果、薬として世の中に貢献できた成果のまとめリストが、久しぶりに Journal of Natural Products の方に掲載されました。同誌では20年以上ぶりでしょうか。
このサイトで扱う長い炭素鎖骨格の化合物でいうと、やはり、エリブリン(ハラヴェンⓇ)の成果を注目したくなります。基となった化合物は、大きな天然物リストにもあるハリコンドリン B ですが、カイメン由来で採集や養殖等による化合物供給は現実的ではない、分子サイズも分子量 1000 を超えるなかなかの大きさなので人工的に合成して供給も難しい、と、強力な抗腫瘍活性があるけれども薬として応用するのは難しいと思われていたといいます。でも、その全合成の過程で構造の一部だけでも十分なことが分かったところから、数十段階の精密かつ市場供給が物質的にも価格的にも可能な合成法を開発して上市までされたのですから。
ものとりの方々も、全合成研究をされる方々も、天然物から薬を創る、と言っているのが口だけではないところを示すことができた一例として、これからも語られる薬だと思います。